みなさんは、どんな時に病院に行きますか?多くの方は、「具合が悪い時」「病気になった時」というイメージをお持ちかと思います。 確かに、病院は医療を提供し病気を治療する場所です。ただ、もう一つ重要な役割があるのをご存じでしょうか。
近年、健康寿命の延伸や予防医療が重要とされ、厚生労働省も我が国の健康先進国に向けた「保健医療2035」を提言しています。その内容は、大きく3つ。
1.より良い医療をより安く享受できるようにする。
2.人々が自らの健康の維持・増進に関与し、デザインする。
3.国境のない新興・再興感染症の封じ込めや災害時の支援などに貢献する機能を強化する。
とされています。
もちろん医療サービスや医療機関を必要としない、健康的な生活がいちばんです。ただ、健康的な生活を続けるには日ごろの健康管理が必要です。
難しい表現になっていますが、この提言にも含まれるように、これからの社会では「健康の維持・増進」がキーワードになってきます。そしてこの中で健康な方を含めて最も多くの方に関わってくるのが今回のテーマである「健康診断」です。
特に身体の調子が悪いわけでもないのに、忙しい日々の中でわざわざ病院に行く時間を作って健康診断を受けるのって、なかなか後回しになりがちですよね。
今回は、そもそもなぜ健康診断が必要なのか、健康診断を受けないとどうなるのか、また健康診断を受ける際のコツをお伝えできればと思います。
なぜ健康診断が必要なの?
健康診断と一口に言っても、内容も受けられる対象も様々です。
最もポピュラーなのが、社会保険に加入している方が会社等の指示で受ける「法定健診」、40歳~74歳で公的医療保険に加入している全ての方が対象になる「特定健診」、項目ごとに対象の年齢になると自治体から通知がくる「がん検診」などでしょう。
他にも職種によって必要になる特殊健診等もありますが、今回は「法定健診」「特定健診」「がん検診」についてお話していきます。
【法定健診】
先ほどお伝えした通り、社会保険に加入している方には年齢にかかわらず年1回、法律で定められた健康診断を受ける必要があります。
労働安全衛生法第66条
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。
法定健診では、血液検査やレントゲンを含め全身の基本的な健康状態を確認することができます。含まれるのは血液検査や尿検査、レントゲンなど一般的な検査ものですが、健診の結果、異常があった場合は必要な項目の精密検査を受けるきっかけにもなります。
また、法定健診は社会保険加入者だけでなくそのご家族(扶養対象者)も対象になることがあります。
年1回の貴重な機会です。詳しくは職場の担当者またはご加入の社会保険事業者にお問い合わせください。
【特定健診】
特定健診(別名:メタボ健診)は、40歳~74歳の方を対象に、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した健診で、生活習慣病の予防に役立ちます。
併せて健診の結果を元に生活習慣病の発症リスクが高く、生活習慣の改善によりその予防に効果が期待できる方に対しては、専門スタッフ(保健師、管理栄養士など)が生活習慣を見直すサポート(特定保健指導)を行うことで、メタボリックシンドローム該当者及び予備軍を減らす目的があります。
メタボリックシンドロームは内臓脂肪に高血圧、高血糖、脂質代謝異常が組み合わさったもので、動脈硬化の原因となり、心疾患や脳血管疾患のリスクが高まります。
2023年時点で、日本人の死因の第2位が心疾患、第4位が脳血管疾患とされています。 年1回の特定健診は、そんな将来のリスクを下げる為の大切な機会になります。
【がん検診】
現在我が国では、国民の2人に1人ががんになり、4人に1人ががんで亡くなっています。
健康診断をなかなか受けられず、症状が出てから医療機関を受診してがんが発見され、見つかった時には既に進行してしまっていたという話も、残念ですが珍しいことではありません。
がん検診の目的は、無症状のうちにがんを早期発見し治療につなげ、がんによる死亡率を低下させること。つまりがんのみに焦点を当てた内容になります。上記の「法定健診」や「特定健診」のように全身の健康状態を確認することはできないので、「健康診断」と併せて定期的に受けることをお勧めします。
厚生労働省の指針では、以下5項目のがん検診を推奨しています。
・胃がん健診 50歳以上 2年に1回
・子宮頸がん検診 20歳以上 2年に1回(※項目によって異なります)
・肺がん検診 40歳以上 1年に1回 ・乳がん検診 40歳以上 2年に1回
・大腸癌健診 40歳以上 1年に1回
この中で、当院では「胃がん健診」「肺がん検診」「大腸がん検診」の3つを取り扱っています。 がん検診は、ほとんどの市町村で補助金が出ます。経済的な負担が少なくがんの早期発見に役立てられますので、是非ご活用下さい。
上手な健診の活用法
ここまで健診の大切さや必要性をお話してきましたが、ここからは健診を受ける際のポイントをお話していきます。
健診は1度受ければいい、たまに受ければいいというものではありません。「定期的に」健診を受けることが、健診を効果的・効率的に受ける為のポイントです。そして、健診を受けた後は結果をしっかり確認しましょう。
「異常なし」でも、健康に全く問題がないと判断するのは間違いです。
「異常なし」は健康であることの証明ではなく、今回の検査では異常が発見されなかったということにすぎません。定期的に健診を受けて、自分の健康状態をチェックし、生活習慣を振り返る機会にしましょう。
また、健診は多くの医療機関で行っていますが、医療機関の選択肢があるのであれば、できるだけ毎年同じ医療機関を利用することをおすすめします。
医療機関では一定期間カルテ保存が義務化されています。毎年同じ医療機関を利用することで、そのときだけではなく数年単位の結果の変化を確認することができます。
毎年のことなので、人によって、アクセスの良さだったり予約の取りやすさだったりと、選ぶ基準は様々だと思います。また医療機関によって取り扱っている内容が異なりますので、事前に確認が必要です。
健康診断を受けた後の相談のしやすさも大切なポイントになってきます。せっかく健康診断を受けても、受けっぱなしではあまり意味がありません。結果に対してしっかりとアドバイスを受け、異常があった場合にはどうしたらいいのか質問できる、そんな信頼関係を築ける場所を探してみるのもいいかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
従来、健康診断の主な目的は、病気の早期発見・治療でしたが、近年では生活習慣病等の病気を未然に防ぐ為の予防的な役割も重要視されています。
現在異常がなくても、将来どのような病気にかかる危険性があるかを予測し、原因となる食事や運動などの生活習慣を変えることによって、様々な病気を予防することができます。
これからは予防医療の時代です。
全ての病気が早期発見できるわけではありませんが、病気が進行してから生活に制限を強いられ、辛い治療に時間とお金をかけるより、定期的に健康診断を受けることで将来のリスクを減らす、そんな時代に切り替わってきています。
自治体からの補助を受けることで自己負担額が軽減できるものもあります。詳しくはお住まいの自治体にご確認下さい。
当院でも各種健診の取り扱いがございます。詳しくはホームページ内健診ページをご確認いただくか、スタッフまでお気軽にお問い合わせください。
今回の記事をきっかけに、皆さんが日頃の健康管理について少しでも意識を向けていただけたら幸いです。