みなさんは胃カメラと聞いて、どんなことをイメージされるでしょうか?「苦しい」「辛い」「怖い」あまり積極的に受けたい方は少ないかもしれません。
しかし一方で、近年では定期的な検診にも登場するほど、胃カメラは身近な検査になっています。
いつかは受けた方がいいのは何となくわかっているけど、怖いし、忙しいしと延ばし延ばしになっていませんか?漠然としたイメージはより不安や恐怖を強くします。
今回は、胃カメラに関してよくある不安をピックアップしてお伝えします。 みなさんの漠然とした不安や恐怖が少しでも解消され、胃カメラを受けるきっかけになれば幸いです。
胃カメラとは?
正式名称は上部消化管内視鏡検査(以下、胃カメラ)。つまり消化管の上部と言われる食道・胃・十二指腸を、先端に超小型カメラを搭載した機械で検査するものです。
一昔前は胃カメラというと非常に辛くて苦しい検査というイメージが強かったかと思いますが、現在では医療機器の進歩が進み、より苦痛を少なく検査できるようになってきています。
高画質で粘膜の観察ができるため、胃炎や潰瘍、ポリープやがん等様々な疾患の早期発見に役立ち、現在ではがん検診にも登場するポピュラーな検査となっています。
同じようにがん検診で可能な検査にバリウム検査がありますが、それぞれメリット・デメリットがあります。 胃カメラとの比較で簡単にご紹介していきましょう。
まずバリウム検査は、バリウムという造影剤を内服した後にレントゲン撮影をします。
レントゲン画像の白黒の陰影から胃の形の異常や表面のひだの凹凸を評価し、病変を検出する検査です。
検査も比較的短時間ででき、バスでの巡回検診も可能な為、がん検診等でバリウム検査のご経験がある方も多いのではないでしょうか。
対して胃カメラは内視鏡で直接咽頭や食道・胃・十二指腸まで粘膜表面をカラーで(がんを検出しやすくする為、特殊光での検査も可能)観察することができる為、
表面の微妙な色やひだの変化、わずかな凹凸まで確認でき、胃癌の疑いがあればそのまま組織を採取し病理検査も可能です。
特に早期胃がん等は凹凸もわずかなことが多く、病気の検出という意味では胃カメラの方が圧倒的に優れています。さらに、バリウムではうまく描出できない咽頭や食道、十二指腸も、胃カメラであれば胃と同じようにしっかりと観察することが可能です。
よく健康診断のバリウム検査で異常を指摘されて受診された患者様に胃カメラのお話をさせていただいた際に、毎年バリウム検査を受けているのに胃カメラが必要なのかというご質問を頂きますが、
検査の精度が違うので胃カメラの方がより精密な検査が可能になるというわけです。
検査の方法としては、当院の場合は大きく2種類あります。
- 目が覚めている(意識のある)状態で鼻または口から細い内視鏡を挿入する方法。
- 眠っている(意識のない)状態で口から拡大内視鏡を挿入する方法。
実際に患者様とお話していると、鎮静剤ありとなしでどちらがいいか、どちらを選ぶ人が多いかというご質問を頂きます。
率直にお答えすると、当院で検査される方は鎮静剤ありの方となしの方は半々くらいです。
強いて言うなら、若い方や初めて胃カメラを受ける方には、細かい条件(後ほど説明します)もありますが、鎮静剤の使用をお勧めしています。
また胃カメラに不安や抵抗がある方や、以前胃カメラをしたことがあり、とてもつらい思いをしたという方も、鎮静剤を使った検査を受けることをお勧めします。
ただし、眠った状態での胃カメラにはいくつか条件があります(詳しくは後ほどお話します)ので、
眠った状態での検査が難しい方、または目が覚めた状態での検査をご希望の場合は、一般的には口からよりも鼻からの胃カメラの方が嘔吐反射が少なく楽に受けられる為、オススメです。
また、最近では胃カメラができる医療機関もかなり増え、鼻からの胃カメラに対応している施設、鎮静下での検査に対応している施設など選択肢も増えています。
その一方で、内視鏡検査は挿入技術も観察技術も非常に専門性の高い高度な技術を要します。
医師の経験と技術が検査の安楽や安心に直結する為、検査を受ける際は是非内視鏡専門医による検査が受けられるかどうかも確認してみてください。
当院では、内視鏡専門医である院長が診察から検査、結果説明まで一貫して行うことができる為、安心、納得して胃カメラを受けることができます。
鎮静剤とは?麻酔とは?
鎮静剤とは、内視鏡検査などの医療処置中に患者様がリラックスし、不快な感覚や緊張を和らげるために使用される薬剤です。
それに対して麻酔とは、(ここでは胃カメラに限った表面麻酔のこととします。)喉や鼻を内視鏡が通過するときの不快感や痛みを軽減するために使用される薬剤です。 患者様とお話していると、「麻酔はするんですか?」というご質問を時々いただきます。
もしかしたら、鎮静剤と麻酔の違いで混乱されている方もいらっしゃるかもしれませんが、当院では、鎮静剤あるなしに関わらず、薬剤アレルギーのある患者様を除き必ず表面麻酔を施します。
その上で、患者様の状態とご希望に合わせて、鎮静剤使用の有無を選択できます。 完全に麻酔なしで胃カメラをするのはかなりの苦痛を強いられるため、よほどの事情がない限りできません。
万一麻酔薬に対するアレルギーがある場合は、負担を軽減するため鎮静剤の使用をお勧めしています。
鎮静剤の使用により、胃カメラ中の「オエッ」という不快感を軽減するだけでなく、検査をしたという感覚(記憶)もない状態で楽に検査を受けることができます。
検査をする上で苦痛が強い場合、患者様も姿勢が安定しなかったり、苦痛軽減の為早く検査を終わらせようと検査をする側も多少焦りますが、鎮静剤を使用し患者様がリラックスして受けられることで、検査中もしっかりと観察することが可能となります。
さらに、鎮静剤下であればやや太めの拡大機能付きの内視鏡を使用することができる為、胃癌などより細かい観察が必要な検査にも適しています。
今まで胃カメラを受けたことがなく不安の強い方、検診等で要精密検査の指摘を受けた方や、胃癌の経験、疑いがある方などは、鎮静剤の使用をオススメします。
鎮静剤を使える人、使えない人はいるの?
とはいえ、すべての方が鎮静剤を使えるわけではありません。鎮静剤が効きやすい方、効きにくい方、鎮静剤を使用する為の条件ももちろんあります。
例えばお酒をよく飲まれる方やお酒に強い体質の方、精神科関係の薬を常用されている方などは鎮静剤が効きにくい傾向にあります。
場合によっては限界まで鎮静剤を投与しても眠れなかったということもある為、無理に鎮静剤を使用するのではなく、細い内視鏡を使用して鼻や口から検査してみることもご検討いただいた方がいいかもしれません。
その場合には、少しでも苦痛を少なくするために、できるだけ肩の力を抜いてリラックスする、検査中は目を開けてボーっと遠くを見る、お腹を締め付ける服装は避ける等の工夫をしてみるといいかもしれません。
また妊娠中も鎮静剤の使用は禁忌とされています。授乳中は問題ないので、お急ぎの場合は細い内視鏡で鼻や口から、お急ぎでなければ安心して鎮静剤をお使いいただける時期を待っていただくのをお勧めします。
それ以外の方は、基本的には鎮静剤は使用可能です。
ただ、鎮静剤を使用した場合、検査後1時間前後で目が覚めます(検査自体は5~10分程度で終了しています。)が、その後約1日眠気やボーっとした状態、判断力の低下した状態が続きます。
そのため検査後1時間程院内でお休みいただいてからのご帰宅になること、検査終了後は車・バイク・自転車等の車両の運転は出来ません。
足元のふらつく中歩いて帰宅しようとして転倒される可能性もあります。
検査後の患者様の安全確保の為、当院では鎮静剤使用の場合は送り迎えや公共の交通機関、タクシー等のご利用をお願いしております。
胃カメラの費用は?
保険適応で胃カメラを受ける場合の検査料金は大まかに以下の通りになります。
鎮静剤を使用しても料金はさほど変わらないので、前述した各検査方法の特徴をご理解いただいた上でご検討いただければと思います。
【胃カメラ検査のみの場合】
1割負担 | 1,500円 |
2割負担 | 3,000円 |
3割負担 | 4,500円 |
【病理検査が必要となった場合】
1割負担 | 3,500円 |
2割負担 | 6,500円 |
3割負担 | 10,000円 |
その場合には検査料金14500円+鎮静剤3980円となります。
まとめ
以上、今回は鎮静剤を中心に胃カメラについてお話させていただきました。 胃カメラを楽に受けていただく為のポイントは以下の通りになります。
まずは各検査方法についてよくご理解いただき、ご自身にとって最適な検査を選択できる手助けができれば幸いです。
1.経験豊富な内視鏡専門医を選ぶ。
2.鎮静剤の使用が可能かどうか確認し、ご自身に最適な検査方法を選択する。
3.鎮静剤を使用しない場合は、「リラックス」「遠くを見る」「締め付けない服装」を心がける。
漠然とした不安は必要な検査を受けるための障壁になるだけでなく、実際の苦痛を強くしたり、検査当日までの時間も憂鬱になったりパフォーマンスの低下につながります。
当院では経験を積んだ医療スタッフが皆様の不安軽減に全力で取り組んでおります。ご不安なことがありましたら是非お問い合わせください。