冬に多いとされる脳血管疾患や心疾患。このうち脳梗塞については、夏にも起こりやすい
ことをご存じでしょうか?今回は暑い夏こそ注意が必要な脳梗塞についてのお話です。
そもそも脳梗塞とは、脳の血管が細くなったり血栓が詰まったりすることで、脳に必要な酸素や栄養素が届かず脳細胞が障害を受ける病気です。軽症であれば「少しおかしい」と感じる程度のこともありますが、症状が重くなるにつれ麻痺や脱力、しびれ、ろれつが回らない、さらに重症化すると命に関わることもあります。
脳梗塞は大きく3つのタイプに分けられます。
①ラクナ梗塞
脳内の比較的細い血管が詰まることで発症します。血管が分岐した先の脳の奥の方の血管を障害する為、影響範囲が狭く、急激な意識障害等は起こりづらく、しびれや呂律不全、脱力等の症状が現れます。場合によっては症状が全くなく、MRI検査等でたまたま見つかることもあります。
②アテローム血栓性脳梗塞
脳内の比較的太い血管が詰まることで発症します。脳血管の中でも血管が分岐する手前の太い部分が障害される為、影響範囲が広く、意識障害や麻痺等重症化しやすいと言われています。
③心原性脳梗塞(塞栓)症
不整脈等が原因で心臓でできた血栓(血の塊)が血流にのって移動し、脳の血管に詰まることで発症します。アテローム血栓性脳梗塞と同様、太い血管が障害される為、症状が急激で重症化しやすいと言われています。
同じ「脳梗塞」ですが、タイプによって原因と起こりやすい時期が異なります。
冬に多いのは「心原性脳塞栓症」。急激な温度変化によって脳血管が収縮し、そこに不整脈によって生じた血栓が詰まることで起こります。
それに対し、夏に増えるのは「ラクナ梗塞」や「アテローム血栓性脳梗塞」。湿気や気温の上昇によって身体が脱水状態になると、血液がドロドロになり血栓ができやすくなります。また身体は普段から環境に適応するため自律神経を働かせて血管の太さを調節したりしていますが、夏は身体の熱を逃がすため血管が拡張して血圧が下がり、全身の血の巡りが悪くなる・・・その相互作用で血栓が詰まりやすくなります。元々の血液や血管の状態が良くないとリスクは上がる為、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)や不整脈といった基礎疾患を持つ方は、脱水を契機とした脳梗塞には特に注意が必要です。
ただこの脳梗塞、初期の症状は実は熱中症によく似ています。そのため熱中症だろうと様子をみてしまうことで、夏は特に発見が遅れることがあります。めまいや脱力、しびれ、ろれつ不全、顔の片側の歪み等の症状が出たら、油断せずすぐに受診しましょう。
また脱水を予防するためにも、「こまめな水分補給」「アルコールの過剰摂取は禁物」「基礎疾患のコントロール」に努めましょう。夏はビール等進みますが、実はアルコールは身体の脱水を招きます。「お酒で水分摂取しているから大丈夫!」は逆効果。お酒の合間に水等挟んで、美味しく安全に楽しみましょう。
脳梗塞は一刻を争う病気。治療の遅れが予後を大きく左右することもあります。症状が急激に悪くなる場合は迷わず救急車を。今年は一段と暑さが身体に堪えます。しっかりと対策をとって、無理なく夏を乗り切りましょう。